奥匹見峡から人跡薄い県境尾根を縦走 高岳(1,054.3m)

島根県益田市匹見町・広島県山県郡安芸太田町・同北広島町

2008年9月6日(土)  仁王さん夫妻+増長天さん+門久

 

 

 

 

〈笹が深く被った島根・広島県境尾根を行く〉

 

 

奥匹見峡から島根・広島県境尾根へ登って、聖湖の西側の高岳(1,054.3m)まで縦走することになった。

昨年6月30日に奥匹見峡から天杉山までピストンしたが、今度は県境尾根を反対方向に行こうという企画だ。

直接の動機は、今秋に参加予定の長距離トレイル縦走への挑戦の為のメンバーの準備、鍛練である。

その第一段としては程良い距離と考えてのチャレンジであった。

副次的には、ここを踏破すれば区切りべースではあるが台所原〜高岳間の県境尾根の全線縦走を果たすことが出来る。

かくして、自動車を聖湖畔の高岳登山口と奥匹見峡駐車場に配しての挙行となった。

 

《山行記録》

奥匹見峡駐車場 9:20・・・・9:32支尾根上・・・・9:44森林入口・・・・10:12苦悶坂始点・・・・10:27 968m峰 10:33・・・・10:54県境尾根道合流10:56・・・・11:12 999.1m峰 11:14・・・・11:43熊棚のあるブナ巨木(驟雨) 11:53・・・・12:00広場のあるピーク・・・・12:17無名峰(昼食) 12:40・・・・13:00聖山分岐13:08・・・・13:47高岳(1,054.3m) 13:56・・・・14:37ひらき橋・・・・14:43高岳登山口

〔総所要時間:5時間23分、昼食・休憩等:1時間00分、正味所要時間:4時間23分〕

 

 

9:20 奥匹見峡駐車場 

  国道191号線で県境から7.5キロメートル島根県に入った所に大きな「奥三段峡」の道標がある。そこを左折して橋を渡り約600m谷間に入って行くと20台は停められるかという広い駐車場がある。この駐車場の北側に「天杉山登山口」という標識のある登山口がある。  

  登山道は、暫し笹や夏草が被る傾斜面を斜度を上げながら登って行く。10分ほどで尾根上に出ると、あとはしっかりとした登山道となる。道はやがて森の中に入る。幾度か緩急を繰り返しつつ県境尾根への支尾根を登って行く。赤松、ミズナラ、ブナの美しい尾根だ。標高968mの支尾根の最高峰のピークの手前には「苦悶坂」という長々とした厳しい急坂が待っている。

 

 

 

 

〈登山口の奥匹見峡の駐車場入口〉

〈登山口から支尾根上への道は藪漕ぎ気味だ!!〉

 

 

 

 

 

〈支尾根から奥三段峡を形成する三ノ谷を俯瞰する〉

〈南西方面を振り返れば春日山(989.2m)の秀麗な姿が!!〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈968m峰直下の樹間からこれから行く高岳の姿を遠望する〉

 

〈「苦悶坂」の急坂を登り切るとブナの美林が〉

 

 

10:27〜10:33 968m峰

  やや蒸し暑い天気の中を汗を掻き掻き支尾根の最高点の968mのピークに到達した。赤松の美しい頂上である。ここからは、ミズナラ、ブナ、赤松の美林の中のよく整備されて道を辿って県境尾根道に向けて下り気味に進んで行く。周囲はほぼ笹原で覆われているが、路傍には様々なキノコ類があって飽きることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈赤松の美しい968m峰の山頂〉

〈968m峰からは緩やかな台地の上を行く〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈カニノツメ(アカカゴタケ科):奇妙な形をしたキノコだ〉

 

〈美林の中を県境尾根へと向かう〉

 

 

10:54〜10:56 県境尾根道合流

  登山口から1時間半程かかって県境尾根道に合流した。ここを右に行けば天杉山へ行ける。今日はここを左に採って高岳を目指す。合流点にはお馴染みの「注意 クマが出没します」の注意書が立てられている。これを見るといよいよツキノワグマの生息区域に入って来たことを痛感する。

  分岐を出ると笹原の斜面の中に拓かれた登山道を辿ることとなる。3年前の平成17年に日本山岳会中国ブロックの100周年記念事業として、この分岐からこの先の聖山分岐までの間の県境分水嶺の登山道が復元された。道は緩やかに登って行く地形に従順に付けられており、眺望もないことから暫し我慢大会のように汗を掻き掻きただ黙々と歩んで行った。やがて笹で覆われた小さなピークを過ぎると、四等三角点のある999.1m峰に出た。

 

 

 

 

〈県境尾根ルートとの合流点〉

〈ここは完全にツキノワグマの生活圏である〉

 

 

 

 

 

〈笹原を切り拓いた登山道が丘陵状のピークに登って行く〉

〈稜線上に出ると笹原とブナの美林の中を行く〉

 

 

11:12〜11:14  999.1m峰

  地形図を見ると今回の縦走路はほぼ標高950mから1000m足らずの稜線上にある。1000mを超えるのは、わずかに999.1m峰手前の小ピーク、聖山分岐のピーク、それに高岳山頂の3地点だけである。それだけに、あまりアップダウンのあるルートとは言えず、長距離トレイルに向けた鍛練の場としてはやや物足りない。

  999.1m峰を出ると、従順に稜線上を行く。この稜線は蛇行をしながら幾つかの小ピークを越えて行く。登山道に被さる笹は背も高くなり、また樹勢も増してほぼ登山道を覆う状態となっている。その手強い笹を掻き分け掻き分け進んだ。眺望は僅かに樹間から聖山の大きな山体を見た以外には、ほとんど効かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈段々と笹の被さり具合が厳しくなって行く〉

 

〈道の中央にある999.1m峰の四等三角点〉

 

 

 

 

 

〈樹間に聖山(1,113.2m)の大きな山体が見えた〉

〈人の姿を隠すほどの背の高い笹の中を行く〉

 

 

  幾つ目のピークであったろうか、巨樹の根元に枯れ始めた枝の切れ端がいくつか落ちていたので、あるいはと思って上を見てみると案の定沢山の熊棚が目に入ってきた。樹の根元近くには、当然に熊の爪痕が刻まれていた。いずれもまだ一週間も経っていない新しいものと思われた。多分ここ数日前にここで美味しい食事を楽しんだ熊クンあるいは熊さん達がいた。今夕も来るかも知れない。

  そんな野趣に富んだ想像をしている時、もう一つとんでもないことが起こった。その前に急激に暗くなった空から、強烈な雨が降って来た。巨樹の森の中にいたにも拘わらず、雨具を着る前に全身ずぶ濡れに、ザックカバーを掛ける間にザックの中身も水濡れになってしまう程の強い雨であった。雷が鳴らなかったのが不幸中の幸いであった。雨は暫し止みそうになかったので、雨具を着て先に進んだ。

 

 

 

 

〈まだ新しい熊棚のある巨木を見上げる〉

〈つい数日前にツキノワグマが付けた爪痕が根元近くに残る〉

 

 

12:17〜12:40 無名峰(昼食を摂ったピーク)

  熊棚のあった稜線上から雨の中を歩いてまた幾つかの小さなピークと鞍部を越えた。雨が降っていなかったら、弁当を開いてみたくなる空地のあるピークもあった。この山域は、聖山の西側の赤川(アカゴウ)の谷の最奥部である。奥山中の奥山であることや、昔も含めて人々があまり利用してこなかった場所のようで、西中国山地の中でも最も情報量の少ないところである。小ピークにも、その間のキビレ(峠)にも名前がない。雨の中を歩いて25分間ほど経ったピークの上で、雨も小降りとなって止みそうな雲行きだったので、昼食を摂ることにした。このピークにも名前はないが、その先は今回のルート上では最も深い峠に下っており、その上は聖山からの登山道が合流するピークであった。

 

 

 

 

〈雨上がり間近のピーク上で昼食タイム〉

〈驟雨にすっぽりと濡れた県境尾根筋〉

 

 

 

 

 

〈峠越しに聖山分岐のあるピークとその先に高岳(1,054.3m)を望む〉

 

 

13:00〜13:08 聖山分岐

  聖山分岐まで来ると人界に返って来たような気持ちになった。それまで魔界にいたという訳ではないが、野趣に富んだ世界から人間の作った秩序があるところに返ってきたという安堵感である。忽ちは藪漕ぎというか笹掻きから解放されるのが有り難い。

  分岐には県境分水嶺登山道の復元の趣意を記した看板が立てられてあった。3年近い年月の経過の中で、大分自然に返ったところはあるものの、この復元事業があっての今日の縦走行である。この事業に感謝せねばならないであろう。

  聖山分岐から高岳までの登山道は、それまでの道に比べると高速道路のようであった。

 

 

 

 

〈聖山分岐:標高1,000m弱のピークの上にある〉

〈聖山分岐にある県境尾根登山道復元の案内板〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈よく整備された聖山分岐〜高岳間の登山道〉

 

 

13:47〜13:56 高岳(1,054.3m)

  雨上がりの高岳の頂上には、登山者の姿はなかった。人気の山だけに寂しい限りではあるが、強烈な雨に出合って皆さんとっくに退散されたのであろう。

  好眺望の山頂であるが、雨上がりゆえに視界はそんなに広くなかった。いつも大きな山体を横たえている臥龍山は雲の中に隠れていたが、独り背伸びしているような深入山だけは、今日も聖湖の先で背を伸ばしていた。

  この日は高岳の頂点を踏んでも、登頂の高揚した気持ちにはならなかった。長く厳しいトレイルを歩いて来て、やっとゴールに到着出来た安堵の気持ちが強かった。早々に下山の途に就いた。

 

 

 

 

〈青空が見える高岳に到着〉

〈高岳山頂の三等三角点〉

 

 

 

 

 

〈高岳からの眺望:左手の臥龍山は雲の中〉

〈深入山と聖湖〉

 

 

14:43 高岳登山口(聖湖畔)

  高岳からの下山路は、あたかも牧歌的な世界へ誘ってくれる楽しい楽しい道のように感じられた。美しい道でもあった。このところ夏にこの道を暫く通ったことがなかったので、歩き続けるほどに長い時間を要したように感じはしたが、高岳頂上から50分足らずで朝方自動車を置いた聖湖畔の登山口へ下山出来た。これで、無事にこの縦走路を踏破したことになる。

 

 

 

 

〈高岳からの聖湖畔への下山道は牧歌的に感じられる〉

〈聖湖畔の高岳登山口〉

 

 

 

〔山行所感〕

  今回のこの山域を訪ねた直接の動機は兎も角、野趣に富んだこの山域の魅力はやはり特筆ものだ。昨年6月の天杉山への南側ルートに比べると、今回の北側ルートは特に特色ある地形がないのでやや散文的な印象は否めない。しかし、散文的、平板であっても、それは本来の平和な自然が持っている特色なのであろうから、その中に身を置いて十分に楽しめるものである。例えば、今回のルートを逆に歩いて、聖山分岐までの世界と、その先の小深い峠を越えた無名峰の頂き辺りの世界とを比べてみると、この山域の良さ、自然の濃密だが簡単に理解出来ると思う。 

  折角3年前に出来た道も、人間が利用せねばまた自然に返ってしまう。数多の人達に行って欲しいとは言わないが、登山道を護れるだけの人跡のあることを願うものである。

 

 

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