西中国山地の奥山で遅い春の自然観察山行 吉和冠山(1,339.0m)・広高山(1,271m)

広島県廿日市市吉和・島根県益田市匹見町・山口県岩国市錦町

2013年5月6日(月) 振替休日    山の自由人(N川さん・O村さん)+門久

 

 

 

 

 

 

〈奥山の春:芽吹き始めたブナの枝に熊棚が残る〉

 

 

 

吉和冠山の裏側の小川林道方面へスミレを中心にした植物観察に行くという「山の自由人」のお二人に加わって

広島、山口、島根三県の県境の西中国山地の奥山を歩いてきました。

5時間余の芽吹きの山地逍遥の間に、スミレを始めとした多くの花々に出逢い、また大規模な熊の生活痕を垣間見て

この人跡薄く野趣豊かな山域の自然の息吹を存分に吸収することが出来て満足な山行となりました。

 

《山行記録》

小川林道終点7:53・・・・8:52水源の標識・・・・9:17縦走路出合・・・・9:46吉和冠山(1,339.0m)9:53・・・・10:13源流碑分岐・・・・10:15太田川源流の碑・・・・10:16縦走路に復帰・・・・10:31寂地山登山道出合(冠山分れ)・・・・10:46後冠山分岐・・・・10:55後冠山・・・・11:10ボーギのキビレ11:15・・・・11:38広高山分岐(昼食)11:56・・・・12:17広高山(1,271m)12:26・・・・12:31ボーギのキビレへの分岐・・・・12:50ボーギのキビレ・・・・13:06冠山登山道出合・・・・13:10小川林道終点

〔総所要時間:5時間17分、昼食・休憩等:0時間38分、正味所要時間:4時間39分、歩行距離:74q、累積標高差:±536m

 

 7:53 小川林道終点

  吉和IC近くに午前7時に集合し、我が車は吉和に置いてO村車に乗せてもらい国()道488号線を中津川に沿って走ってから小川林道に入った。ゲートを抜けると直ぐにダートの道となり、路面はまま整備されており、時折灌木の枝や草が車体を擦ったものの何とか終点まで辿りつくことが出来た。車の持ち主であり運転手を務めてくれO村さんは、きっとハラハラドキドキしたことと思う。終点の広場には先客はなかった。

  身支度を整えて出発した。ホン谷に沿って踏み跡が冠分れと吉和冠山を結ぶ登山道との出合い点まで続いているので、その周辺を歩きながら、お目当てのスミレの花や葉を探すのが今回の第一の目的であった。沿道には多くの花々が咲いていた。スミレでこの辺りに多いのはスミレサイシン。日本列島の日本海側に多いスミレだという。白いシコクスミレもあった。中国地方でシコクスミレが見られるのはこの吉和冠山の山域くらいとのこと。花々を探しながら、ゆったりと登って行った。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈小川林道の終点に車を置いて、先ずは吉和冠山を目指す〉

 

 

 

〈新緑の小川林道から吉和冠山を仰ぐ〉

 

 

 

〈ホン谷は太田川源流域のひとつ〉

〈タチカメバソウ〉

 

 

 

〈ワサビ〉

〈スミレサイシン〉

 

 

 

〈コチャルメルソウ〉

〈ヤブレガサ〉

 

 

 

〈ネコノメソウ〉

〈エンレイソウ〉

 

 

 

〈シコクスミレ〉

〈渓流沿いに目的のスミレを探す〉

 

 

 8:52 水源の標識

  冠山分れと冠山を結ぶ登山道との合流点が近くなってくる頃に、川床に1本の杭が立っていた。かつては「太田川の源流の碑」と記されてあったが、今はもう文字があったことも分らなくなってしまっている。付近は広々とした谷間で、「西中国山地」(桑原良敏著)によると「東大沼ヶ原」と呼ばれる地域のようだ。灌木が繁っているが、その林床には小さな花々姿が多かった。タチツボスミレやタチカメバソウなどの群生も見られたが、何よりもこの辺りからカタクリの花が多くなってきた。今年のカタクリの花期は早くもうこの日には期待していなかったので、ここで可憐な花達に逢えることは望外の喜びであった。冠山分れからの登山道と出合って、吉和冠山へと道を採った。まだ葉を落としたままの灌木の林の中を登り行くと、林床にはカタクリやスミレの姿が多く見えた。そろそろ芽吹きを迎えそうなオオヤマレンゲの群生地を過ぎて杉林に入ると、その辺りにはジャクチスミレがあるという。スミレサイシンとシコクスミレの交雑種で、交雑種は普通にはその代限りのところ、この地域ではそれが多年草として群生しているとのこと。学説的にはまだ確とした位置づけがなされていないとのことであるが、今日見たスミレの中にそれがあったことを祈りたい。今まで知らなかったこんな知識も得ながら、その花を探す楽しさも感じた次第。

 

 

〈広々とした源流部〉

〈今は文字も消えてしまった源流標識〉

 

 

 

〈バイケイソウの群生〉

<タチツボスミレ〉

 

 

 

〈タチカメバソウの群生が多くなってきた〉

〈ナツトウダイ〉

 

 

 

〈カタクリがまだ健在であった〉

〈縦走路に出合う〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈ジャクチスミレかシコクスミレか?〉

 

 

 

〈カタクリのシロバナに遭遇〉

 

 

 

 

 

 

 

 

〈シコクスミレの特徴が強く、殆どシコクスミレのようだ〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈少し紫がかっているが、これはジャクチスミレかな?〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈登山道はカタクリロード〉

 

 

 

 9:46〜9:53 吉和冠山(1,339.0m)

  植物観察をしながらゆっくりと歩いたので小川林道終点から2時間弱の時間で山頂に到着した。山頂からは萌黄色の山肌に屹立するクルソン岩を俯瞰出来た。この日はピークハンティングが主目的ではなかったので、早々に山頂を発って次なる植物の観察地へと向かうことした。暫し登り来た道を引き返して冠山分れを目指した。「東大沼ヶ原」を横断する形であった。ここはまだカタクリロードであった。あまり気にしないで先を急ごうとも思ったものの、綺麗な群生が現れるとついカメラを向けることとなってしまった。冠山分れで松ノ木峠から寂地山への登山道に合流した。ここもカタクリロードであった。30人程の団体が寂地山から来られたが、皆さん綺麗なカタクリにさぞ過満足されたことであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈クルソン岩を俯瞰する〉

 

 

 

〈吉和冠山々頂〉

 

 

 

〈芽吹き前の森を抜けて裏冠山を目指す〉

〈キランソウ〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈太田川水源の碑に立ち寄った〉

 

 

〈冠山分れへの縦走路を行く〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈ミヤマカタバミ〉

 

 

〈カタクリ三姉妹〉

 

 

 

 

 

 

 

 

〈林床に拡がるカタクリの群生〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈冠山分れ〉

 

 

〈松ノ木峠から寂地山への道に入る〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈路傍には美しいカタクリの群生が続く〉

 

 

10:46 後冠山分岐

  寂地山への縦走路上の1,282メートルのポイントを過ぎたところで、薮の中を北方向に延びる踏み跡が分岐している。後冠山から広高山へと続く踏み跡である。もう10年以上も前に辿ったことがあったが、この日も久しぶりにここに踏み入った。直ぐに後冠山のピークを踏む形になったが、周囲は広々とした平坦地であるが故にピークに立った感慨はなかった。それでも、森の中の高みから寂地山方向を見遣ると、広々とした芽吹きの森が見渡せて美しかった。この平坦地形は「西大沼ヶ原」と呼ばれるようである。後冠山のピークから樹間に北を望めば、図体の大きな広高山がシルエットのように見えた。こんなに大きな山であったかと思う間もなく、先頭を行くリーダーが踏み跡の登山路を外れてボーギのキビレへの斜面を気儘に下り始めたので、その後を追うこととなった。どこでも歩ける林床で、カタクリの花も咲きヤブレガサの群生が目立った。

 

 

〈寂地山への縦走路を外れ後冠山への薮の道に分け入る〉

〈芽吹きを迎えた清新な森を抜けて行く〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈裏冠山から芽吹き森越しに寂地山、右谷山方面を望む〉

 

 

〈芽吹きの森に咲くカタクリの花〉

 

 

 

〈裏冠山から樹林越しに広高山を望む〉

〈林床に広がるヤブレガサの群生〉

 

 

11:10〜11:15 ボーギのキビレ

  薄暗い杉林の中のボーギのキビレで暫し小休止を取った。山深いところであるが、ここも安芸と石見の国堺である。かつてはここにも峠が開かれており、人々が行き交い国境を示す標識が立っていたのであろうか。ここから直接広高山に登るはっきりとした踏み跡が続いているが、我々はヒロコウ谷の源流部を辿ってから広高山へ登る計画であった。ここは道を西に採ってヒロコウ谷へと下って行った。薄いながらも踏み跡があり、沿道にはテープも巻かれていた。直ぐに渓流の源頭部に出たが、好天続きのせいか川床には殆ど水がなかった。川床や河岸に続く踏み跡を辿りながら、植物観察を行った。踏み跡はとても薄くて時には見失うこともあった。ただ渓流に沿って行けば迷うことはなかった。また河岸の森の中も自由に歩けた。広々とした牧歌的な谷間で、植生も多様なようであった。ボーギのキビレから30分間程下った広高山への分岐点近くの河岸でランチタイムとした。食後、渓流を外れて広高山への登路に入った。雑木の中を直登する踏み跡であった。振り返ると、後冠山から寂地山、更に額々山へと続く尾根筋がスカイラインとなってヒロコウ谷の反対側に続いていた。登路は尾根上に達すると杉の古木やブナの森となり、笹原を分けながら山頂部へと進んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈ボーギのキビレからヒロコウ谷に下る〉

 

 

〈苔生すヒロコウ谷の渓流〉

 

 

 

〈牧歌的なヒロコウ谷の源流域〉

〈河岸段丘で暫しランチタイム〉

 

 

 

〈広高山分れで渓流を離れて広高山を目指す〉

〈ミズナラやブナの森の中の踏み跡を直登する〉

 

 

 

 

 

 

 

 

〈振り返れば広高谷の向こうに寂地山から額々山への稜線が延びていた〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈見上げれば残った熊棚がブナの樹に架かっていた〉

 

 

 

〈ブナや杉の古木の稜線を行く〉

 

 

12:17〜12:26 広高山(1,271m)

  久しぶりの広高山の山頂であった。10年以上も前と変わらない荒れ様で、形ばかりの踏み跡の広場があるだけの極めて散文的なところであった。近くに吉和冠山が見えるが、厚い樹林越しのため撮影対象とはなり得ないのが残念であった。暫し周囲の観察をしてから、長居する所でもないのでボーギのキビレへと下ることとした。来た尾根筋を数分戻るとテープの巻かれた地点から左側に下る踏み跡があった。杉林の中を一度鞍部に下ってから、今度はブナを中心とした自然林の中を小ピークに登って行った。ここにあった大きなブナの樹々の上に、見事と言ってもよい程の多重構造の熊棚が掛かっていた。冬の間の大雪でも落ちなかった丈夫な熊棚のようであった。熊の高層マンションと言った感じでもあったが、この山域が専ら彼らの生活圏であることを改めて認識する光景であった。その先の小ピークを越えると昼前に寄ったボーギのキビレであった。ボーギのキビレから車を置いている小川林道の終点部へは巻き道が通じていた。その道に入って気付いたことには、広高山の山域には花々の姿が殆どなく、ボーギのキビレを過ぎると直ぐにスミレやミヤマカタバミなどの花が多くなってきたことであった。巻き道を辿ること約15分間で、朝方に登ったホン谷沿いの登山道に出た。

 

 

〈広高山の山頂、荒れていて散文的〉

〈枯れ木に結びつけられた山名標〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈ボーギのキビレへの登山道に取り付く〉

 

 

〈杉林の中を下って行く〉

 

 

 

〈稜線部のブナの大木の上に沢山の熊棚を発見!〉

〈熊の高層マンションといった感じがしないでもない!〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈ブナの木肌には熊の爪跡が残る!〉

 

 

 

〈倒木を乗り越えて進む〉

〈ボーギのキビレ〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈広高山の山域を外れると再びスミレサイシンが現れた〉

 

 

〈コチャルメルソウの花が愛らしい〉

 

 

13:10 小川林道終点

  ホン谷沿いの登山道を下ると小川林道終点部は直ぐであった。朝方には我々の車だけであったが、もう一台加わっていた。西中国山地の最奥部の三県の国境の広い山域を僅か5時間で周回出来たのは、ここが既に標高1,100メートル程の高地であるが故である。長く荒れ気味のダートの林道を走ることは心身共に大変なことではあるが、山行の効率アップには絶大な力があるようだ。林道の持つ長短の両面を考察して、うまく使いたいものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈車が一台増えていた小川林道終点部に帰着〉

 

 

〈終点部の広場の脇に立つ〉

 

 

〔山行所感〕

  小川林道を利用しての吉和冠山、広高山を中心にした自然観察の山行は、多様な植生や大規模なツキノワグマの生活痕を見ることが出来て充実の半日となった。奥深いスミレの世界の入口にも立たせてもらって、目の前が少し明るくなると共に、これからがまた楽しくなりそう予感がするがさてどうなるであろうか。人跡薄い西中国山地の奥山には、まだまだ心を奮い立たせてくれる楽しみの世界が残っているようである。

 

 

 

 

 

 

 

〈この日の軌跡〉

 

 

 

 

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