〜宮本 輝〜
(みやもと てる)
 
男性よりも女性の読者の方が多いのではないか?
「ストーリー・テラー」と軽々しく呼ばれているが、この作家の内実は、
もっとものすごい情念で満たされている、いや、
満たされている、とう言うよりは、大きな空洞が……
 

著者に対して
 高校時代に『青が散る』がテレビドラマ化されたのを垣間見て知る(ドラマ本編は観ていない。ただ、エンディング・テーマの『人の駱駝』が印象に残っていた)。
 本格的に知るのは大学に入ってから。
 初めに手に取った作品は『青が散る』。ドラマのエンディング・テーマが作品中に語られている詩だと知るのはこの時。
 以来、『春の夢』『流転の海』『泥の河』『螢川』『道頓堀川』『優駿』『海辺の扉』『異国の窓から』などを読みすすめる。
 どこにやったのか、消えたのか、『春の夢』『青が散る』『夢見通りの人々』が手元にない。実家の倉庫か? 古本屋か?
著作 読後感
『青が散る』
 
文芸春秋
1982年 刊
 テレビドラマでこの作品を知った方も多いだろうし、このドラマについてのサイトも良く見かける。
 私も新設の学部に入学し(設立4年目)、当時、無い無いづくしで始まった大学生活とダブらせてしまった。
 輝きつつもその瞬間から色褪せてゆく青春、若さの放つ滞る事のない(ように見える)エネルギーに動かされる登場人物たちを、長篇ながら流れるような筆致で描ききる。
 
 何かから逃げるようにテニスに打ち込む主人公の僚平と重ね合わせるように、私は陸上長距離と自転車、それに水泳も併せてのトライアスロンをやっていた。自分もまた「何か」から逃げるように……
『優駿』(上・下)
 
新潮社
1986年 刊
 映画化された作品であり、かつ、古本屋でも良く見かけるので、よく知られた作品であろう。
 作者が子供の頃に読んだ絵本『名馬 風の王』をキエチーフに、“ただの動物ではない不思議な存在”である競走馬に魅入られた人々を描く。
 会社員時代に競馬にはまり込み、クビが廻らなくなったこともしばしばある、そういう経験を経てきてなお、競走馬の魅力(魔力?)にとり憑かれる作者の心情を露にすることなく、あくまでも伏せつつ静かに描かれる。抑制の効いた、しかし作者の熱情が伝わってくる流れである。この点で、“普通の競馬ファン”がそれと思って読んだ場合、やきもきする事だろう。しかし、この作品は賭け事たる“競馬”を描くのではなく(無論、そういう場面も挿入されているが)、“競走馬”を描いたものなので、賭け事の神様に魅入られた人には向かないだろう。
 昨今、中央競馬会が印象と雰囲気で競馬人口を増やそうと躍起になっているが、果たして、どれくらいの人々が、著者の説く「サラブレッドの魅力」を味わう事なく、競馬場の入り口に待ち構えている賭け事の神様に魅入られてしまうのだろう。
『春の夢』
 
文芸春秋
1984年 刊
 借金取りから逃れるように母と分かれ主人公が引っ越してきた古アパート。電気が来ていない暗闇の部屋の柱に手探りで打ちつけた釘から物語は始まる。
 “キン”と名付けられた、主人公によって打ちつけられた釘により、柱から動けなくなってしまった蜥蜴。奇跡のように生き続けるが、それと同時に主人公の心に、深々とくさびを突き刺してゆく事になる。
 『青が散る』の焼き直しと読んでしまうが、より作者の心情を物語る作風になっている。
よんどくかいとく
 『流転の海』『地の星』『血脈の火』続く二編。
 筆者が終生のテーマとして掲げている、父と子の不断のつながりを描き続ける作品群。情愛ものは読む気になれない。


 

 

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