| 甘い記憶 … 1 … |
|
――……ル……ハル… 「…っあ……」 暗闇の中 絡みつく何かから逃れようとするが、体が動かない ――ハル……ハル… 低く、それでいてよく通る声 まるで耳元で囁かれているようでぞくっと体が震えた 「…んっ…」 突然、唇をなにかに塞がれた それが誰かの唇だと気がついたときには口の中に何かがぬるりと入ってきた 「ふ…んんっ……」 反射的に舌で押し出そうとして、逆に絡め取られ吸われる 「……ん…はっ、はぁ…」 遼の口内を散々蹂躙したそれが離れたときには、遼の息も絶え絶えになっていた ――…ハル…お前は…… …誰? 誰なの? いやだ 怖い 怖い 助けて 誰か… こんな …こんな、……されるくらいなら、私は… …私は? ――ハル、忘れるな……お前は……… 「いやぁぁぁっぁぁぁああっっ!!」 自分の悲鳴で遼は目を覚ました。 突然の覚醒にビクッっと体が跳ねる。 硬直した手は白くなるほど強く布団を握り締め、びっしょりとかいた汗で体は氷のように冷たい。 荒い呼吸にまだ夢の中ではと恐る恐る目を開けると、涙でぼやけた自分の部屋に少しずつ落ち着きを取り戻した。 夢の叫びは口から出ていたのだろう。 ノドの鈍い痛みが証明していた。 「遼!?どうかしたの!?」 遼の声は部屋の外にまで聞こえたのか、戸の外から遼の母、慶子の心配そうな声がした。 「だ…大丈夫。また怖い夢をみちゃったみたい」 「……そう。もう起きなさい。もうすぐ夏休みでしょう?」 カーテンの隙間からは今日の暑さを予感させる眩い朝日がさしこんでいる。 「はーい!すぐ支度します!」 慶子の遠ざかる足音にホっと力が抜ける。 母親に心配させまいとあえて元気な声で返事したが、体の震えは未だに止まっていなかった。 毎日のように繰り返すあの悪夢。 内容はまったくといっていいほど覚えていない。 だが、あの声だけは、目覚めてもなお遼の頭の中で響き続けた。 ――――…ハル、お前は… 「……っ」 遼は震えを止めるようにぎゅっと腕を抱きしめると、恐怖を振り払うように勢い良くベッドから飛び起きた。 |
| Back*Top*Next |
|
|