2012年12月議会一般質問一部参考資料
鉱研工業株式会社前社長・工学博士 江口工著書「地下水放射能汚染と地震
東電が見落とした新たな危険」
2012年4月2日発行より
1.
目次
はじめに
第1章 地下水放射能汚染という新たな危険
未曾有の国難から1年
被害を拡大させた大津波
復興は時間が解決する
地下水汚染の恐怖
地下水のメカニズムとは
地表と地下は別世界
高低に関係なく流れる
想像もつかない速さで流れる地下水
第2章 東電が公表を拒んだ福島第一原発の地下構造
日本中に広がった放射能汚染
なぜ、地下水への汚染が未だに危険なのか
水を通しやすい互屑地形
泥岩に対する認識を誤った東京
60本もあった地下水汲み上げ井戸
サブドレーンエ事で使われたセメント注入工法
チェルノブイリでも地下水対策が最重要だった
地下水汚染でキエフが死の町になる可能性も
チェルノブイリが最初の事故ではない
セメント注入工法で防がれた放射能汚染
フランスまで汚染地下水が達したという説も
第3章 地下水放射能汚染を防げ
偽りの「冷温停止宣言」
原発周辺のモニタリング調査が急務
手探り状態だった政府の対応
海への地下水流出を防ぐ
飲み水が危なくなる
福島原発事故対策構想
核廃棄物の地下貯蔵の可能性
その場しのぎにするな
使用済みウランは生まれ故郷に帰す方法も
除染は本当に意味があるのか
第4章 地下水大都市・東京の落とし穴
注目された「ホットスポット」
汚染地下水は東京にもやってくる?!
東京の高い地下水位
皇太子殿下と水井戸
巨大なダムになっている東京の地下
水没した東京駅地下ホーム
地震で危ないのは地下街の水没
第5章 地震と地盤の意外な関係
地震の予知は不可能に近い
地震のメカニズム
断層がある場所に大地震は発生しない
断層の特性を応用した地震防止工法
東京での地震は過度に心配いらない
東海地震を考える
海底探査と地震予知
第6章 3・11以後のエネルギーと日本の未来
エネルギー政策の転換点
既存ダムの再利用という道
地熱発電の可能性
地方活性化につながる「半農半鉱」
まだ幼い小学生の頃、
故郷・福岡県筑後地方に
ほど近い大分県の山奥にある
鯛生(たいお)鉱山から
運ばれる金鉱石が
トロッコから落ちてくるのを集めて、
ピカピカ輝く金鉱にすっかり興味を持ち、
それから早や将来を夢見ていた。
社会に出て、
鉱山探査の若きエンジニアとして、
アフリカ大陸の南アフリカに
第一歩を踏み出した。
それ以来60有余年の長きにわたって、
いろいろな地下開発関連の調査、
研究に携わり、
ボーーリング機器の製造
そして施工に没頭した。
ゆうに100ヶ国
を超える国々を
東奔西走してきた。
なかでも
旧ソ連諸国には
70回ほど出張し、
北朝鮮にも
3度訪れる機会があった。
そのような
「鉱山師」であったが、
あることがきっかけで
チェルノブイリ原発事故
の事故収束に
かかわることになった。
そして、今度はその縁で
2011年3月11日の
東日本大震災による
原発事故の後には、
官邸をけじめ霞が関諸官庁、国会議員
東電の原発関係の役員に福島原発事故対策について意見を求められることになった。
もちろん、私以外にもそれぞれの分野の専門家が意見を求められたと思うし、具体的な対策案も出たと思うが、単に「聞き及び」に終始した感があったのは今でも残念だ。
我が国では初めての大事故で、世界的に見てもアメリカのスリーマイル島やソ連の
ウラルマヤークそしてチェルノブイリ事故くらいしか例がない。原子力発電という仕
組みが開発されてから半世紀になろうとしているが、未だに事故が起きたときの解決
策さえ確立されていない状況なのだ。そうであるから、事故直後のIヶ月は政府も東
電もどうしてよいのか暗中模索の現状だったと推測できるが、かたや事故収束の見通
しも曖昧なままでの「冷温停止宣言」や、被災者の早期帰郷の話が独り歩きしている。
だが、原発事故は決して収束に向っているのではない。大問題は未だに市電によって
隠されたままなのだ。
では隠されたままの問題とは何か。それは原発立地地点の地下部分の状況だ。実は
未だに放射能に汚染された地下水はなんの対策もとられないままになっているのだ。
現に今年2月、原発冷却水の水漏れ事故が二十数か所に及んでいることを明らかに
し、いずれも冬の寒さによる氷結で送水パイプの継ぎ手が破損していたからだと発表
した。もちろん、そのようなお粗末な配管工事が事ここに至って行われたとは思えな
い。他に理由があるはずだ。
さて、詳しくは本章で述べているが、今福島第一原発の原子炉基礎基盤は最悪の状 況になっており、原子炉全体の沈下や傾倒が既に始まっているのではないかと大いに
懸念される事例が多数見受けられる。かような疑問は今後も増え続けるであろう。だ
からこそ、ここで地下水汚染問題を世に提起しようと思い立ち、本書を書いた次第だ。
第1章では地下水放射能汚染と地下水のメカニズムについて解説している。そして
第2章では福島第一原発周辺の地層構造とそこに隠された危険性について解説した。
そして、第3章では地下水放射能汚染を食い止める構想について述べている。さらに
第4章ではその汚染され九地下水が首都圏に到達するとどうなるのか、という点につ
いて述べている。
さらに相変わらずの地震に恐怖を覚えている方々に、私の永年にわたる地震研究も
合わせて明らかにしたい。
最近、特に権威ある大学や研究機関が、首都直下型地震について次々と調査結果を
明らかにしている。これらについても私見を述べている。
「あと四年」と言わずとも、地震はいつ起こるか分からない。地震が全く発生しない、
というのはまずありえないし、発生すること白‥体は否定しない。しかし、首都圏での
はじめに
大規模な地震については、そこまで過度の心配は無用なのではないか。これらの点に
ついては第5章で詳しく述べている。
私は地下構造に関する研究をライフワークとしており、加えて「地震のメカニズム
と予防」、「放射能廃棄物の最終処理」の2つについて研究してきたので、その成果を
公表することができればと考えている。
最後に第6章では3∴‥一以後の干不ルギー政策について私見をまとめた。その中で
水力発電に隠された可能性について述べている。既存の発電用のダムは長年の利用で
L流からの堆積物で埋まっている状態になっている。昨年9月に奈良県・和歌山県を
襲った台風による土砂災害と同じようなことが日本中で発生する危険性が迫っており、
既存のダム整備は急務の課題だ。そこで災害対策と電力対策を同時に行えるのが既存
ダムの再整備なのだ。
そして最後に我が国の閉塞した経済の現状打破の私案として、一案を述べている。
長引くデフレ不況で暗いムードが漂い、特に若者の働き場がないという自体は日本国
家として最悪のことだ。「国内鉱山の再開発」、「半農半鉱」というキーワードでふる
さとが明るさを取り戻し、日本再生に繋がっていくことを期している。
未曾有の困難から1年
マグニチュード9・Oという側洲至ト最人級の規模の人地震であった東日本大震災
から、まもなく1年が経とうとしている。
3川]H‐14時46分、宮城県の牡鹿半島の東南東沖約130キロメートルの海底を震
源として発生したこの地震は、青森県から千葉県までの広範囲に大きな被害をもたら
した。実に南北約500キロメートル、東西にして約200キロメートルの広範囲に
及んだ。宮城県栗原市では最大震度7を観測し、遠く離れた東京でも震度5を記録し
た。地震直後の交通マヒによる帰宅困難者の問題や、その後の電力不足による計画停
電もあいまって、文字通り「東日本」に訪れた未曾有の大災害であった。
震災から半年経った9月1-H日の時点で、政府発表による震災における死者・行
方不明者は約2万人(最北では北海道で工人が死亡。最南では高知県で1人負傷
者を出している)、建築物の全半壊合わせて27万戸以上(全壊1111万5163戸、半
壊16万2015戸。他に全半焼284戸、床上浸水1万1576戸、床ド浸水
1万2649戸)、ピーク時の避難者は40万人以上にのぼったと言われる。この震災
における物的被害額は少なく見積もって16兆から25兆円弱と試算されている。
しかし、あれだけの大地震であったにもかかわらず、地震自体の被害で比べれば
1995年1月17日の阪神・淡路大震災ほどの致命的大破壊には見舞われてはいない。
今回の震災による被害や死者の多くは地震によって発生した津波によるものが大きか
った。21世紀の日本を生きる人々が未だ経験したことのない規模の大津波は私たちの
想像をはるかに絶していた。
被害を拡大させた大津波
16
震災における死者のうち、津波その他による水における被害者(水死者)は1万2143
人に上る。これは身元が判明している全死者の92・5パーセントに及ぶ。建物の倒壊、
あるいは家具などの転倒、天井の崩落などによる圧死および損傷死は578人で、こ
れは全体の4・4パーセントに過ぎない。加えて火災による焼死は148人で、全体
のI・Iパーセントであるから、いかに津波による死者が多かったが分かるだろう。
今回の震災は、われわれに水の恐怖をまざまざと見せつけてくれた。阪神・淡路大 地下水放射能汚染という新たな危険
未曾有の困難から1年
マゲニチリード9・Oという観洲至L辰人級の規棋の人地衣であった束日本大震災
から、まもなく1年が経とうとしている。
3川H目14時46分、宮城県の牡鹿半島の東南東沖約130キロメートルの海底を震
源として発生したこの地震は、青森県から千葉県までの広範囲に大きな被害をもたら
した。実に南北約500キロメートル、東西にして約200キロメートルの広範囲に
及んだ。宮城県栗原市では最大震度7を観測し、遠く離れた東京でも震度5を記録し
た。地震直後の交通マヒによる帰宅困難者の問題や、その後の電力不足による計画停
電もあいまって、文字通り「東日本」に訪れた未曾有の大災害であった。
震災から半年経った9月一H日の時点で、政府発表による震災における死者・行
方不明者は約2万人(最北では北海道で1人が死亡。最南では高知県で1人負傷
者を出している)、建築物の全半壊合わせて27万戸以上(全壊r―i万5163戸、半
壊16万2015戸。他に全半焼284戸、床上浸水1万1576戸、床下浸水
1万2649戸)、ピーク時の避難者は40万人以上にのばったと言われる。この震災
における物的被害額は少なく見積もって16兆から25兆円弱と試算されている。
しかし、あれだけの大地震であったにもかかわらず、地震自体の被害で比べれば
1995年1月17日の阪神・淡路大震災ほどの致命的大破壊には見舞われてはいない。
今回の震災による被害や死者の多くは地震によって発生した津波によるものが大きか
った。21世紀の日本を生きる人々が未だ経験したことのない規模の大津波は私たちの
想像をはるかに絶していた。
被害を拡大させた大津波
震災における死者のうち、津波その他による水における被害者(水死者)は1万2143
人に上る。これは身元が判明している全死者の92・5パーセントに及ぶ。建物の倒壊、
あるいは家具などの転倒、天井の崩落などによる圧死および損傷死は578人で、こ
れは全体の4・4パーセントに過ぎない。加えて火災による焼死は148人で、全体
のI・Iパーセントであるから、いかに津波による死者が多かったが分かるだろう。
今回の震災は、われわれに水の恐怖をまざまざと見せつけてくれた。阪神・淡路大
震災での死傷者の90パーセントは倒壊しか家犀や家具のド敷きによる圧死であった。18
.方で、4 2‐本人震災では、先にも記しか最人衣皮7の宮城県栗原巾であっても、圧
死片は。天も出ていない。その他の被災地における圧死者も、直接の死因は津波によ
って流出した瓦傑や家目八のド敷き、あるいは挟まれてのものだったと思われる。
いずれにせよ、場所によっては波高が10メートル以上におよび、最大遡上高が40・
5メートルにも上ったというから、まさに逃げ場のない状況であっただろう。この津
波によって多くの人命と家屋はじめ貴重な財産が失われてしまったのだ。
復興は時間が解決する
しかし、この大震災と大津波からの復旧・復興は、いわば時間によって必ず解決で
きることだ。あの阪神・淡路大震災の際も、神戸の街は壊滅状態からわずか数年で、
見違えるほどのきれいで素晴らしい街に生まれ変わることができた。
阪神大震災の際には、電気はほとんどの地域で3~7日間で復旧が完了し、地下に
埋まっている水道、ガスについてもIヶ月で復旧のメドが立つたといわれている。
津波によって壊滅した町並み(福島県南相馬市鹿島区)