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「はじめまして俺、川上一成(かわかみいちなり)っていいます。」
放課後の学校は部活動をする生徒の声でにぎわっている。
しかし、校舎裏のこの場所は沈黙が漂っている。
「あの…俺…」
少年はなんだか言いにくそうに言葉を発す。
少女は意味がわからないでいた。
何故に、此処に呼び出されたのか。
見知らぬ少年が何故にこんなにも言いにくそうにしているのか。
「好きなんです。柳さんのこと。」
そう言う少年の顔はみるみると赤くなっていく。
「あたしも好きだよ」

あたしは、柳朱華(やなぎしゅか)、高校1年。
よく変わっているといわれる。
「ええ〜告られたって?朱華、マジで?」
同じクラスの希(のぞみ)ちゃんは昼食の蒸しパンをほおばりながらおどろいてる。
「うん、本当。」
同じく朱華も蒸しパンを食べている。
「誰に?」
「川上くんに。」
「川上って生徒会長じゃん。」
朱華は相変わらず蒸しパンをおいしそうに食べている。
どうやら、彼女は蒸しパンが好きらしい。
「んで、返事は?」
いきなり、希が朱華に寄ってきた。
希はこの手の話が好きらしい。
「あたしも好きだっていった。」
そんなことにも気にしない朱華。
「そうだったの?朱華、川上くんのこと好きだったの?」
「うん好きだよ。希ちゃんもクラスのみんなも。」
「ってちがうでしょ。男として好きかってきいてんの。」
「しらない。考えたことないもん。」
「あんたねー、間違いなく川上は女としてあんたが好きだと思ってるよ。」
「何で?」
「何でってだから告ったんでしょうが!」
「そーいうもんなの?」
「当たり前でしょうが、あんた恋愛ってモンわかってんの?」
「わかんないよ。」
「はあ〜。なにそれ?」
「だから、わかんないの!」
「あんたって、やっぱり変」
希はあきれていった。

だって、わからないんだもの。
クラスメート達が言ってる『恋愛』っていうモノが。
その気持ちがあたしには理解できないんだもの。
だってみんな好きなんだもん。
だから、てっきり川上くんはそれを確認しに来たんだと思ってた。

「じゃあ、希ちゃん教えてよ。」
「いいわよ。恋って言うのは、みんなとの感情とは別の『好き』っていう気持ちなの。」
「どんな『好き』なの?」
朱華がそう聞くと希は少し困ってこういった。
「それは自分でわかるようになんなさい。」

あれきり、希ちゃんは教えてくれなかった。
肝心なことがやっぱりあたしにはわかんない。

「あれぇ、柳さん」
廊下で悩んでいる朱華に川上が話し掛ける。
「あっ川上くん。」
「どーしたの?」
「ちょっと聞きたいことがあるの。」
「ん、なに?」
「あのね、あたしのどこが好きなの?」
朱華の問いに川上は戸惑いながら笑う。
「それは、俺にもわかんない」
川上の思わぬ答えに朱華はちょっと不満を感じた。
「どーいうこと?」
「いつのまにか気になってたんだよ。柳さんの行動を目で追うようになってたんだ。柳さんに見られているだけで顔は赤くなるし、柳さんがいるだけでがんばれるんだよ。なんていうんだろうね、この気持ち。でも、それを俺は『恋』だと定義してるよ。だから、告白したんだよ。柳さんのこともっと知りたいと思ったし、俺のことも知って欲しいと思ったから。」

やっぱりわかんないわ。
あたしはどこか欠けているのかしら。
昔は『好き』だと思ってた人もいたの。
でもいつの頃かきがついたの。
本当にその人の事好きなのかって。
恋に恋してたんじゃないかって。
そう思ったら『恋』ってモノがさっぱりわかんなかったの。
人に聞いても解決にならないってわかってるの。
でもね、そうでもしないと不安で不安でたまらないの。
本当にあたしは人間なの?
神様があたしを作るとき部品をひとつ忘れたんじゃない?って。
そして、誰からも相手をされなくなることがたまらなく怖いの。

あたしは、中学の頃にイジメにあった。
部活内でシカトされていた。
今まで、友達だって思って人からもシカトされた。
まるで、あたしがこの空間に存在してないような、そんな気持ちになった。
すっごく、すっごく悲しかったし悔しかった。
でも、自殺とかは考えなかったよ。
だって、そんな人たちのために死ぬなんて嫌だった。
ぜったい、ぜったい嫌だった。
いつか、見返してやるって思った。
いつか、あたしを好きになって欲しいと思った。

「柳さん?どーしたの。」
ぼっとしている、あたしに川上くんは話し掛ける。
「ごめんなさい。」
いきなり朱華は川上くんに謝りだした。
「ごめんなさい、あたし川上くんがそう言う意味で告白してきたとは思わなかったの。」
意味がわかっていない、川上。
「あたし、『恋』ってわからないの。友達としてだと思ってたの。だから、あたしも川上くんを好きだといったの。ごめんなさい。」
少し考えて、川上はようやく意味がわかったらしい。
そして少し残念そうに笑った。
「そうだったんだ…。」
「待って!」
去ろうとする川上の制服の袖をつかむ朱華。
「柳さん?…」
「わがままだってわかってるの。でも…。あたしと友達になってください。」
「え…。」
「なんだか、あたし、もっと川上くんの事知りたいって思うの。だからぁ…」
その言葉を聞いて川上は笑顔になる。
「勿論、喜んで。」

END

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コメント:いかがだったでしょうか。思ったよりも短くなってしまいました。
さて、はたしてこの空間に存在する何人が『恋』というものを理解しているかわかりませんし。
『恋』の定義なんてあたしにもわかりません。
まあ、人それぞれだと思うのです。
このお話は川上くんなりの定義ということで、自分と違うと思っても見逃してやってください。

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